今回は、家の間取りを考える際に知っておくと便利なサイズの話です。
建築では普段の生活では使わない単位も出てくるため、ある程度だけでも知っておくと、打ち合わせの時などに便利でしょう。
まずは今回の記事のまとめからみていきましょう。
・建築では、メートルやセンチ以外に、寸(すん)・尺(しゃく)・間(けん)の3つの単位を使うことがある
・現場の大工さんなどは、寸・尺・間を組み合わせて寸法を伝達することが多い
・建築資材は尺モジュールを基本に設計されているため、特にこだわりがなければ尺モジュールの方がオススメで、部分的にメーターモジュールの設計にすることも、工法や場合によって可能
1.建築で使うサイズの名称
建築ではメートルやセンチといった単位以外に、古来の用語を使うことが多いです。
まずは、そのサイズの名称やサイズ感などを見ていきましょう。
1-1.寸・尺・間
建築では、主にこの3つの用語を使い分けて、モノのサイズなどを表すことがあります。
寸(すん):約3cm
尺(しゃく):約30.3cm
間(けん):約182cm
当然、メートルやセンチといった単位も使いますが、現場の大工さんなどは、これらの用語をよく使う傾向にあります。
この3つの用語の組み合わせで寸法を言い表します。
例えば、90cm(正確には91cm)の場合は、3尺と言ったり、半間(はんげん)と言ったりします。
1尺=30.3cm×3で3尺、もしくは182cmの半分で半間となります。
また273cmのことを1間3尺、45cmのことを1尺5寸という言い方もよくされます。
これらは建築でよく使われる寸法であり、全てが寸・尺・間をベースに考えられていることから、大工さんもこういった用語をよく使います。
1-2. 寸法は全て「中心」が基準点になる
建築では柱の中心点が基準点になります。
平面図を見てもらうと、上から俯瞰的に見ているような形になりますが、柱の太さや壁の厚みは一旦考慮せず、柱の中心から柱の中心までで寸法表記をすることが一般的です。
そのため、柱と柱の間が91cmあっても、実際に柱の厚み・壁材の厚みなどによって、実際に部屋として使える寸法は91cmから小さくなってきます。
そのため注意すべき点は、廊下の幅やドアの有効開口寸法(実際に通ることができる最大寸法)です。
洗濯機など、家電製品でサイズが大きなものを購入する際に、91cmという寸法を考えていると実際には通過できず、場合によっては壁を壊して入れる、といったケースもあります。
参考程度に、約91cmの中で開き戸の有効開口寸法は約70cm程度、そして廊下の幅としては78cm~73cmになるため家具・家電を購入する場合の参考にしてください。
2. 尺モジュール・メーターモジュール
次に、よく尺モジュールもしくはメーターモジュールという用語が用いられますが、間取り設計の「間隔」を表すものです。
柱が910cm間隔で立っている場合は「尺モジュール」、そして1m間隔で立っている場合は「メーターモジュール」となります。
それぞれの特徴やメリット・デメリットなどを解説します。
2-1.尺モジュールのメリット・デメリット
日本における建築の9割以上は尺モジュールで設計されています。
あえて取り上げるメリットはありませんが、1つ言えることは選ぶものに苦労しないこと。
日本の建築の9割以上が尺モジュールで作られていることから、住宅設備や建材は尺モジュールを基準に設計・製作されています。
そのため尺モジュールの場合、サイズが原因で選ぶものに不自由を感じることはない点が、メリットと言えるでしょう。
一方のデメリットとしては、メーターモジュールに比べて間隔が狭いことから、家族の中に車椅子の方や介護が必要な方がいらっしゃる場合、廊下が狭くなるという点です。
尺モジュールの実際の廊下幅は78cm~73cmですが、この寸法は車椅子を通過させるときに少し窮屈です。
※参考:車椅子の幅(JIS規格)
・手押しの車椅子:最大63cm
・電動車椅子:最大70cm
尺モジュールの場合、通過できないわけではありませんが、少しでもズレると壁に当たったり、少し不便な状況になります。
2-2. メーターモジュールのメリット・デメリット
メーターモジュールは、一部の大手ハウスメーカーなどで取り入れられている手法で、全体から見ると少数派です。
デメリットから先にお伝えすると、メーターモジュール用の建築資材はかなり少ないです。
そのため、基本はメーターモジュール用の建築資材を使うことになりますが、尺モジュールであればサイズ通りピッタリになるところ、メーターモジュールの場合は「余り」が出てくるためコストアップにつながっていきます。
尺モジュールで設計されている資材で4m分をカバーしようと思うと、91cm×5=約4.5mの資材が必要です。
尺4つ分では約3.6mにしかならないため、余分に1つ必要となりコストアップすると共に、加工をする手間も増えるためこれもコストに直結してきます。
一方のメリットは、廊下幅などが広くなるため、家が全体的に余裕をもった空間になることです。
顕著にわかる部分としては、廊下だけでなくトイレのサイズ(特に幅)や、階段の圧迫感が軽減される点が挙げられます。
2-3.尺とメーターモジュールのミックスプランも可能
基本の設計は尺モジュールになっており、階段や廊下だけメーターモジュールにする、という設計は物理的には可能です。
ただ、住宅会社によってはその対応ができない場合や、耐震設計上不可になる場合が考えられるため、必ずできるというものでもありません。
みなさんの要望と、建築上の可否はプランや工法によって異なってくるため、どうしてもこだわりがある方は住宅会社に相談してみましょう。
3. 住宅設備機器のサイズ
つづいて住宅設備機器のサイズについてみていきましょう。
3-1.水まわり設備
キッチン:半数以上が幅255cm × 奥行65cm
2間(3.6m)の中に片側通路で出入りできるような一般的なプランの場合、壁の厚さや通り抜ける寸法を考えると、255cmという幅(長さ)がちょうどいいケースが多く、キッチンでの採用も255cmがもっともよく出るサイズです。
また壁付け対面キッチンが全体の約半数と言われていますが、このような壁付け型のキッチンでは奥行65cmが一般的です。
またキッチンの高さ(床面~カウンター面)は、80cm・85cm・90cmから選べることが一般的です。
よく使う方の身長に合わせて、選ぶと良いでしょう。
・150~160cmの方:80cmタイプ
・160~170cmの方:85cmタイプ
・170cm以上の方:90cmタイプ
お風呂:1616(1坪タイプ)
お風呂のサイズを表すとき、1616や1621という言い方をします。
これはお風呂の内側の寸法(水平方向に縦・横)を測った時のサイズを表しており、1616であれば160cm × 160cmとなります。
一般的にもっともよく出るサイズは1616、いわゆる1坪タイプの商品となっています。
・1216:0.75坪タイプ
・1616:1坪タイプ
・1621:1.25坪タイプ
・1624:1.5坪タイプ
洗面化粧台
洗面化粧台は、幅75cmもしくは90cmのタイプが一般的です。
1坪(2帖)の洗面空間の場合、洗濯機と並べることを考えると、75cmタイプを導入した方が安心です。
4.まとめ
このように建築では、独自の呼び方や単位を使って表すことがよくあります。
住宅会社との打ち合わせや、現場の大工さんの話を聞く機会がある場合には、このようなサイズを一通り読んでおくことでなんとなく理解しやすくなるのではないでしょうか。
それでも、尺や間などを組み合わせてパッと言われると分からないこともあると思います。
そういった時は、何センチですか?と遠慮なく聞くようにしましょう。